血管内膜肉腫 · 超希少がん · ほとんど研究されていない

このがんと診断された人が、ゼロから始めなくてすむように。

血管内膜肉腫(intimal sarcoma)は、もっともまれながんのひとつです。

あまりにまれなため、病気の経過についての信頼できるデータも、共通の患者登録(レジストリ)もなく、臨床試験を組み立てる土台がほとんどありません。私たちは、その欠けている土台をつくっています。実際の症例を分子データと結びつけて整理し、ばらばらの体験を、科学が使える形に変えていきます。

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患者が立ち上げた、スイスを拠点とする非営利の取り組みです。 肉腫研究をすでに牽引している施設に、人とデータをつなぎます。同じことを重複して行うのではありません。

100万人に1人未満
推定される頻度
ほとんどの腫瘍内科医は、一度も症例を診ることがありません。
レジストリなし
データベースが存在しない
この病気の自然経過に特化したデータセットは、現在どこにもありません。
1例1例に価値がある
1例ごとに研究が前進する
これほどまれな病気では、記録された症例が1つ増えるだけで、わかっていることが目に見えて変わります。
課題

まれであることは、単なる不運ではありません。誰かが道を開かないかぎり、研究の行き止まりです。

がんがこれほどまれだと、医療の通常の仕組みが働かなくなります。症例は国や病院ごとに散らばり、結論を出せるだけの患者さんを診ている施設はひとつもありません。信頼できる生存統計も、いつ・どこに再発するかの見取り図も、薬を試すための組織バンクもありません。臨床試験を組み立てる土台がないため、研究資金の出し手も企業も近づきません。

その結果、新しく診断された患者さんも、担当する医師も、ほぼゼロからのスタートになります。私たちは、これは解決できる問題だと考えています。足りないのは画期的な新薬ではなく、整理された情報です。

患者さん・ご家族へ

血管内膜肉腫とは? いま何をすればよいか

血管内膜肉腫(intimal sarcoma。単に「内膜肉腫」とも呼ばれます)は、太い血管の内側の壁(内膜)にできる悪性腫瘍です。子宮内膜の病気とは関係ありません。ほとんどは肺動脈に、まれに心臓や大動脈に発生します。血管の内側に向かって育つため、CTでは血栓のように見え、約10人中7人は最初に肺塞栓症として治療されます。診断は、病理組織検査と、MDM2増幅の分子学的な証明によって確定します。MDM2増幅は、ほとんどの場合、CDK4またはPDGFRA(あるいは両方)の増幅を伴います。

最初の数週間でとくに大切なことは3つあります。肉腫の専門施設で診てもらうこと(日本では、国立がん研究センター希少がんセンターの「希少がんホットライン」で相談先を探すことができます)、治癒の可能性がある唯一の治療である手術による完全切除が可能かどうかを確認すること、そして、どの分子標的薬や臨床試験が選択肢になるかを左右する遺伝子検査の結果(分子プロファイル)を手に入れることです。

日本では、国立がん研究センター中央病院が、MDM2増幅のある血管内膜肉腫を対象にMDM2阻害薬ミラデメタンの第Ib/II相試験を行い、評価可能な10人中2人(20%)で15か月を超える持続的な効果が報告されています(Koyama ほか、Cancer Discovery 2023)。ミラデメタンは承認された薬ではありません。

くわしい患者さん向けガイドは、いまのところ英語のみです。日本語でのご質問も歓迎します。お返事は、翻訳ツールを使った日本語、または英語になります。このページは英語版をもとに翻訳したものです。不自然な表現や誤りにお気づきの場合は、ぜひお知らせください。

血管内膜肉腫ができる場所
肺 肺 心臓 横隔膜 大動脈 1 2 3
1
肺動脈
もっとも多い発生部位です。肺動脈幹と右肺動脈に多くみられます。大動脈の約2倍の頻度です。診断時の平均年齢は48歳。
2
心臓
多くは左心房に発生します。心臓の内膜肉腫(cardiac intimal sarcoma)と呼ばれることもよくあります。診断時の平均年齢は約50歳。
3
大動脈
腹部大動脈が中心(約70%)で、胸部大動脈はそれより少数です。診断時の平均年齢は約62歳。
まれに、ほかの太い動脈(冠動脈、腸骨動脈、大腿動脈)や肺静脈にも発生します。
血管の内膜から始まる
内膜(血管内膜)は、血管の内側をおおうなめらかな層です。腫瘍はそこから血管の内腔に向かって育ちます。CTでは血栓のように見えるため、肺動脈の場合、約10人中7人が最初に肺塞栓症と診断されます。
血管内膜(内側の層)腫瘍血管壁
模式図です。縮尺は正確ではありません。
MDM2/CDK4増幅:ひとつの変化、ふたつの影響
1
DNAの一部が余分にコピーされる
正常な細胞 12番染色体 MDM2 CDK4 12q13-15 腫瘍細胞 数十コピー
腫瘍細胞は、12番染色体の短い領域(12q13-15)を何度もコピーします。これは変異ではありません。遺伝子そのものは正常で、数が多すぎるのです。
標準的な検査:腫瘍組織のFISH検査。
2
MDM2が多すぎる:p53にブレーキがかかったまま
通常、p53は傷ついた細胞を止めるか、細胞死へ導きます。MDM2が多すぎると、TP53遺伝子自体はふつう正常でも、p53が抑え込まれたままになります。
結果:傷ついた細胞が止められない
3
CDK4が多すぎる:細胞が分裂し続ける
CDK4は、細胞にRbチェックポイントを通過させ、分裂へと進ませます。CDK4が多すぎると、細胞は何度も繰り返し分裂に入ります。
結果:細胞が何度も分裂する
治療が作用する場所
MDM2阻害薬
ブレーキをゆるめ、p53が再び働けるようにします。早期の試験で腫瘍の縮小が報告されていますが、これまでに有効性を示したランダム化試験はありません。
CDK4/6阻害薬
分裂へ向かう信号を止めます。脱分化型脂肪肉腫ではランダム化試験のデータがあります(アベマシクリブ、第III相SARC041試験)。
2026年10月時点
同じ増幅が、複数の診断名に共通しています:異型脂肪腫様腫瘍/高分化型脂肪肉腫脱分化型脂肪肉腫血管内膜肉腫傍骨性骨肉腫
簡略化した模式図です。
「血栓の疑い」から、適切なチームにたどり着くまで
診断までのよくある流れ
消えない「血栓」
息切れ、胸の痛み。抗凝固療法(血液を固まりにくくする薬)が効きません。
画像検査
造影CT、MRI、FDG-PET/CT。腫瘍はFDGを強く取り込みますが、血栓は取り込みません。
組織
生検、または多くの場合、手術で切除された組織。
病理組織検査+分子検査
典型的な所見:MDM2増幅(約3分の2以上の症例)。CDK4やPDGFRAの増幅を伴うことも多くあります。
診断されたばかりですか? とくに大切な3つのこと
1
肉腫の専門施設を受診する
この診断には、この病気を診た経験のある人が必要です。肉腫にくわしい病理医、肺動脈や大動脈の内部の手術に慣れた外科医、そして限られたエビデンスを把握している腫瘍内科医です。
2
手術による完全切除が可能か確認する
手術は、この病気を治癒させる可能性のある唯一の治療です。これまでに発表されたどの症例集積でも、完全切除がもっとも重要な要因です。
3
分子プロファイルを調べてもらい、写しをもらう
MDM2/CDK4/PDGFRAの検査と、できれば幅広い遺伝子解析(がん遺伝子パネル検査)を依頼しましょう。診断の裏づけになり、分子標的治療や臨床試験を検討する土台になります。
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情報提供であり、医学的な助言ではありません。
あなたにできること

私たちがいま答えを探している、2つの問い。

どちらも答えは出せます。ただし答えられるのは、この病気を経験した人か、この病気に携わっている人だけです。どちらかに当てはまるなら、1通のメッセージが大きな力になります。

血管内膜肉腫と診断されてから3年以上になりますか?

あなた、またはご家族が、血管内膜肉腫の診断から3年以上経過しているなら、ぜひお話を聞かせてください。発表されている生存期間の多くが「月」単位で語られるこの病気では、経過が良かった方の経験こそが、もっとも貴重な情報です。そして、そのほとんどは、これまで一度も記録されていません。

何を、どこで、どの順番で行ったか。それだけで十分です。

経過を伝える →

遺伝子検査の結果をお持ちですか? 数値を送ってください。

私たちは自分たちの結果を公開しました。あなたやご家族が、血管内膜肉腫のNGS(がん遺伝子パネル検査)やFISHの結果をお持ちなら、そこに書かれた増幅とコピー数が、共有していただける情報のなかでもっとも役に立ちます。名前もカルテも不要です。数値だけで構いません。

いただいた数値を比較に加え、私たちが把握しているほかのすべての症例と並べたときに、あなたのプロファイルがどう見えるかをお返しします。

結果を送る →
患者と話す

メールアドレスを残してください。同じ病気の患者からご連絡します。

長い文章は必要ありません。ひとことでも、空欄のままでも大丈夫です。通常は数日以内に、こちらからご連絡します。

医師・研究者の方へ 1例でも診療経験がある方、あるいはMDM2/CDK4増幅のある肉腫に関わる研究をされている方は、材料と資金があれば何をしたいか、ぜひお聞かせください。私たちは、ありきたりな実験よりも、本当に意味のある実験を支援したいと考えています。お問い合わせフォーム、または contact@intimasarc.com までご連絡ください。

血管内膜肉腫のための非営利の取り組みです。知識を整理し、肉腫研究を前進させている施設につなぎます。このサイトは情報とコミュニティを提供するものであり、医学的な助言ではありません。 治療に関する判断は、必ずご自身の医療チームと相談してください。明示的な同意なしに健康に関する情報を収集することはありません。
相談先・関連団体

どこに相談すればよいか。

日本

国立がん研究センター 希少がんセンター — ncc.go.jp/jp/rcc
肉腫を含む希少がんの診療と情報提供。
希少がんホットライン — ncc.go.jp/jp/rcc/hotline
患者さん、ご家族、医療者が電話で相談できる窓口。相談先や病院を探す手助けが受けられます。
がん情報サービス(国立がん研究センター) — ganjoho.jp
がんの種類ごとの解説と、病院・相談窓口の情報。
NPO法人キュアサルコーマ — curesarcoma.jp
肉腫の患者さんとご家族を支援する患者団体。
日本希少がん患者会ネットワーク(RCJ) — rarecancersjapan.org
希少がんの患者さんとご家族のための団体。

海外

SPAGN – Sarcoma Patient Advocacy Global Network — sarcoma-patients.org
肉腫患者団体の国際ネットワーク(英語)。
EURACAN – 希少固形がんの欧州リファレンスネットワーク — euracan.eu
Sarcoma UK — sarcoma.org.uk

ほかの超希少がんの患者主導の取り組みや、日本の肉腫の患者会をご存じですか? 教えてください。リストに追加します。